レーザーカッターに適切なアクリルとは

レーザー加工の代表素材アクリル

CO2レーザー加工に向いている代表的な素材の一つがアクリルです。ネットでもホームセンターでも簡単に購入もでき、レーザー加工可能な樹脂の中では最も適していると言える素材になります。

1mm~10mm位のものであればCO2レーザーで精密なカット加工が可能、もちろん彫刻加工も可能です。

厚物のカットを行っていないFab施設が多い?

5mm厚のアクリル

1mm~10mm位のアクリルは切れると説明しましたが、実は基本的なFab施設のカット加工規定は大体は5mmまでとなっています。『10mmのものは切れないのか?』というと切れるのですが、Fab施設が厚物のカットを導入していない理由としては以下があげられます。

  • カットスピードを遅くしないと切りきれない=時間がかかる
  • 集塵のシステムが整っていないと発火の危険性が高い
  • レーザーカッターのレンズが厚物に対応するインチのものではないといけない

私の使用しているFab施設のレーザーカッターも5mmまでのカット加工を可能としています。

1.5inch規格のレンズというものを使用しており、彫刻などの細かい加工をする際に適している&5mmまでのアクリルは切れるので汎用性が高く、他のFab施設でも多く使われている様です。

1.5inchのレンズ

10mmなどの厚物を切りたいときは

厚みがあるものを無理やり切ろうとするとFab施設に迷惑をかける事にもなりかねません。その施設の規定はしっかりと守り、その範囲内での加工をしましょう。無理に加工を行おうとすると、レーザーカッター本体へのダメージにもなります。

具体的には、パワー規定を守らないことで本体の心臓部と言われる発振器の故障につながったり、レンズ周りに煙がこもることでレンズ本体に焦げが出来てしまうなどが挙げられます。

どうしても厚みのあるものが切りたい!という場合はアクリル屋さんにお願いをしたり、データを送って加工を専門に行ってくれる業者さんにお願いしましょう。断面の処理の仕方なども各種方法がありますので、コストがかかってもいい場合はおすすめ。

アクリルの種類

実はアクリルの板にも種類があります。キャストアクリルと押し出しアクリルです。レーザー加工に向いているのはキャストアクリルになります。

しかし、UVプリントする際のインクの定着率は押し出しアクリルの方が良いので、例えば『カットしたアクリルに印刷してキーチャームを作りたい!』などという場合は、押し出しアクリルの方がキーチャームとしての寿命としては長くなりますね。

それぞれの特徴についてまとめてみたので、作る物や予算に合わせてアクリルを選んでみましょう。

キャスト

カナセのキャストアクリル

作り方:ガラス板の間にアクリルを流し込んで作る
レーザー加工:向いている
UVプリント加工:できるけど押し出しより定着率低い
強度:押し出しより弱い
溶解接着:多少溶けにくい
価格:押し出しより高い

レーザー加工をする=熱が発生するので、基本的には熱に強いキャストアクリルの仕様がレーザー加工の際には推奨されています。

レーザーのパワーの設定が強すぎるとアクリルは熱変形を起こしますが、キャストアクリルの場合は押し出しと比較するとその率が低く、又彫刻を施す際に熱により発生してしまうモヤの発生も押し出しよりは少ないです。
※もちろん数値設定を過度にミスしていると、キャストでも変形は起きます!

ですので、レーザー加工初心者の方はまずはキャストアクリルを購入してみましょう💡
わからない時はホームセンターの方に『キャスト製法のアクリルを購入したいのですが』と言えばOKです。

強度や接着に関しては多少弱い。というところですが、経験上キャストアクリルの加工で問題と思うようなことはなかったので、本当に繊細な加工が必要という場合や何か特別な事情がない限りはキャストアクリルで間違いないと思います。

押し出し

クラレの押し出しアクリル

作り方:溶かしたアクリルをローラーで押し出して作る
レーザー加工:不向き
UVプリント加工:とても向いている
強度:強い
溶解接着:溶けやすい
価格:キャストより安い

レーザー加工しないのであれば、強度や経年劣化の観点から考えると押し出しの方がいいんじゃないの?という意見もあると思います。

しかし、アクリルという素材自体極端に雑に扱わなければ壊れることは少ない優秀な樹脂素材です。2~5mmほどのアクリル板から切り出しを行い、個人単位での物作りをするにはそこまで神経質にならなくても良いかと思います。

例えば、『お店のディスプレイで10mm厚のアクリルで大きな棚を作りたい!』というような規模の大きいものや、重いものをのせ続けなくてはならないって場合に関しては別なので、押し出しを選ぶ方が良いのかもしれませんね。

又補足として、加工後に切断面に衝撃を与えたり、エタノール・アルコール類などをつけるとクラックというひび割れ現象が起きることがあります。これはどちらの種類のアクリルに対しても起きる現象ですが、押し出しの方がこのクラックは起きやすいので注意しましょう。

断面がクラックした様子

切ったものを何かのためにアルコールで拭く・アクリサンデーで接着するなどという加工工程がある場合はキャストの方が良いですね。

まとめ

今回はレーザー加工の代表素材アクリルについてでした。CO2レーザーは非常に多くの種類の材料に対応している機械ですが、素材によって仕上がりやレーザーの数値設定は異なります。

kinacreateでは加工素材の紹介や加工結果についても発信して参りますので、『この素材をテストしてほしい!』といったご意見もお待ちしております。