CO2レーザーで切れる素材-MDFについて-

CO2レーザーで切れる素材:MDFについて

今回はCO2レーザーで切れる素材MDFについてです。

レーザーカッターで加工する時にもよく使用される素材ですね。やはり安価に手に入ることから、まずは試しに何か作ってみたい!という方にもおすすめできる素材の1つだと思います。

ざっくりいうと木材なのですが、MDFという種類の木が存在するわけではないんですね。では一体どんな素材なのでしょうか。

Medium Density Fiberboard

MDFの端材

MDFはMedium Density Fiberboardの略です。ミディアムデンシティーファイバーボード。

  • Midium:中くらい、中程度の
  • Density:密度
  • Fiberboad:繊維板

簡単な言葉に置き換えるのであれば、程よい密度の繊維の板ということになります。日本語では中質繊維板ともいうみたいですが、一般的には皆さんMDFとよんでいます。

MDFはどの様に作られ、どのような場で使用されているのか

冒頭でお伝えしたように、MDFという木がどこかに生えているわけではありません。MDFは木材と合成樹脂からなる素材です。

木材のチップを細かくし、さらに繊維化してから成形した板の事を総称してファイバーボードと呼びます。そしてこのファイバーボードはその密度・硬さ・用途・製法により

  • 中質繊維板(MDF)
  • 硬質繊維板(ハードボード)
  • 軟質繊維板(インシュレーションボード)

の3つに分類されます。文字からもわかるとおり、ミディアム(中間)の硬さと密度で幅広い用途に使用できるのがこのMDFとなります。

余談ですが、これらファイバーボードの親戚にはパーティクルボードという素材も存在します。
ファイバーボードは木材のチップを繊維化してからギュッと固めるのに対し、こちらは繊維化ではなく小片化したもの(木材を程よく粉々にしたくらいのテンション感)を固めて作ります。

パーティクルボードの使用例カラーボックス

おそらく皆さんも一度は組み立てた経験があかと思いますが、カラーボックスの中板等がこのパーティクルボードにあたります。MDFと比較するともっと荒い木片感がある素材ですね。

MDFの加工における特徴

レーザーカッターやUVプリンターで加工する際のMDFの特徴についてみていきましょう。

  • 作り方:繊維化した木を合成樹脂等々で固める
  • レーザー加工:向いている(カットには比較的パワーが必要)
  • UVプリント加工:向いている
  • 強度:変形や防腐しにくいが湿気には弱い
  • 接着:木材なので勿論◎ ですが、金具固定の機会の方が多い
  • 価格:非常に安価

MDFは非常に安価でありながら優れた強度を持つ素材です。レーザーカットは1.5inchレンズで5.5mm、2.5inchレンズで9mm位までしか私は加工経験がありませんが、やはり合成樹脂で固めていることもあり、切るのに比較的パワーがいる素材だと感じます。

一度、黒いMDFを加工したときには通常のMDFの数値では切れず、さらに強いパワー設定にして2度切りを行なった経験もあります。

マスキング有り・なしのカット比較

レーザーカットしたMDF

マスキングしたMDFとマスキングなしのMDFのカット時の焦げ目を比較しました。3mmのMDFを使用し、P85/S0.65/H20000 Air:on で加工です。

マスキングありのMDF
マスキングなしのMDF

表面は今回あまり焦げなどは生じませんでしたが、パワーが強い場合・素材の厚みが5mm~などある場合・集塵システムが弱く、加工機会内部に煙が充満する場合などは縁に茶色いもやが出る可能性があります。

裏側はやはり、マスキングなしのMDFはレーザーの反射によるハニカム網の跡がかなり目立つ結果となりました。

切ったMDFに塗装などを行わない場合はマスキングを行う方が良いと言えますね。マスキングテープを貼る際には、一度洋服などにぺたぺたとマスキングテープの粘着面を当てて、粘着力を弱めてから貼ると良いです。素材を痛めにくくなります。

MDFは反りにくい

木材全般は湿度や保管している環境によって反りが生じてしまいます。この反りはレーザー加工の際には大変問題になります。

レーザーカッターは素材表面にレンズで集めたレーザー光の焦点を合わせ、1点に集めることで、より集約したエネルギーで素材を切ります。その為、反りの起きている木材をセットした場合、素材の場所により焦点距離の差が生まれるため、焦点がずれた部分に加工にムラが生じます。

シナ合板2.5mmあたりなどは特に湿度の影響で捻れる様な反りが起きやすく、セッティングの際には注意が必要です。一方、MDFは湿度には弱いですが変形はしにくいのです。

『MDFは湿度には弱いが変形はしにくい』とはどうゆうことでしょう。

MDFに水を垂らすと

例えば、MDFの上にお水をうっかりこぼして数分気づかないで過ごしてみたとします。

3~5分ほどの放置時間でしたが、2枚目の写真はすでにお水を少し吸収し始めています。

水を取り除いたところ
アップ

直接的に水に触れた部分は水分を吸収してしまい、ぽっこりと素材表面にムラが生じてしまいます。

又、湿度の高いところにしばらく置いておく場合を考えても、カビなどが発生しやすく湿度には大変弱い素材です。

ですが、反り・変形などの面を考えると、MDFは合成樹脂が成分に含まれることやその製法の特徴(方向がなく強度が一定で、平面性が高いこと)で、シナ合板などと比較すると反りは起きにくく扱いやすい素材です。

以上のことからMDFは湿度には弱いが変形はしにくいと言うことができます。しかし、MDFもあくまで木材であることには変わりないので、可能な限りは保管しておく場所の湿度や環境の管理はすべきではあります。

実際の加工物

MDFを使用し撮影した写真をパズルに

脚の部分もMDF

MDFの3mmと4mmを使い作成したパズルです。使用した写真もあえてボケ感のあるものを選びました。(F4.5 1/250s ISO AUTO)

通常の木材のように表面に木目が生じていない為、ボケ感のある側(写真の主に右の部分)も問題なく印刷を行うことができました。

まとめ

今回はMDFという素材について見ていきました。簡易的な家具作りやプロトタイプを作成する際にはとても役に立つ万能な素材ですね。

素材の特性についてこの記事で知り、是非加工に役立ててください。それでは。